「ジェーン・エア」レビュー ※ネタバレあり
【あらすじ】
両親に先立たれ、孤児となったジェーンはリード夫人とその子供たちに疎まれながら育つ。9歳になった頃、ローウッド寄宿学校へ行くことになったジェーンは厳しい環境ながらも友人のヘレン・バーンズやテンプル先生に会い忍耐や尊敬の心を学ぶ。
生徒として6年間、教師として2年間ローウッドで過ごした後、ジェーンはさらに広い世界を見るためローウッドを出て家庭教師になることを決しする。
ソーンフィールド邸で家庭教師として雇われたジェーンはロチェスター氏と運命的な出会いをするのだが・・・
【感想】
✔︎きっかけは大学の授業
大学の頃、学科の授業で一度簡単に触れる機会があった。その時にジェーンの人間性に強く弾かれた記憶があり、ずっと気になっていたので今回読んでみることにした。
✔︎初めは友だちに慣れないタイプだと思った
ジェーンは常に冷静沈着で淡々と物事をこなし、自分の考えをしっかりと持った芯の強い女性である。この作品を読み始めた最初の頃はそんなジェーンに憧れを抱きつつも、友だちには慣れないタイプだな、なんて思っていた。
物語はジェーン自身により「私」と言う一人称で語られており、時折読者に向けて語りかける場面もあるが、そこで私はジェーンの人間らしい一面を目にする。
ジェーンが8年間の寄宿学校生活を終え、家庭教師となってソーンフィールドへ向かう道中での一場面。ジェーンは読者に向けてこう語る。
読者よ、わたしは気持ちよく宿屋に落ち着いているように見えても、
心の中は、いっこうに穏やかではなかったのだ。
ジェーンはその後も、物語の中でロチェスター氏に対する気持ちの揺れ動きや、嫉妬などについて赤裸々に語っている。ロチェスター氏との結婚を噂されるイングラム嬢の描写はあまり好意的なものではなく、ジェーンの感情も含まれているようで面白かった。
このような表現を目にする度に、ジェーンと読者である私の距離は少しずつ縮まっていったように思う。
✔︎静かに燃える青い炎
女性の半生を描いた古典小説といえば「風と共に去りぬ」が有名だが、
ジェーンはスカーレットとはまた別の魅力を持った女性である。
例えるならば、スカーレットが熱く燃える赤い炎だとすればジェーンは静かに燃える青い炎のような印象だ。
先述したように、ジェーンは私たち読者と同じように迷ったり悩んだり、ロチェスター氏への愛を語る熱い一面を持っている一方で、冷静沈着で知的な女性である。自分の中での基準がはっきりしており、人生の決断を迫られた時の彼女の決断力には感動する場面も多かった。
✔︎女性の地位が低かった時代
この小説が書かれたのは1847年。女性の地位は低く、偏見も強かった時代だった。
そんな時代に裕福ではなく、しかも家庭教師という立場であったにもかかわらず、周りの状況や相手をしっかり理解し、見事に仕事と恋愛を両立させた彼女に、私は尊敬を覚えた。
✔︎コントラストが素晴らしい
ジェーンが物語の中で見せる芯の強さと決断力、その一方で読者に向けて語られる正直な胸の内。このコントラストがジェーンという人物をとても魅力的に見せていると私は感じた。ジェーンが冷静なだけの女性だったら私はここまで彼女に感情移入して物語を読むことはできなかったと思う。
✔︎おまけ
バーサ・メイスンが出てくる場面など、所々に出てくる荒々しい描写は
エミリー・ブロンテの「嵐が丘」を彷彿とさせる部分もあるなと個人的に思いました。
(あくまで個人の感想です)
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